前回は耐震等級の基本についてお話ししました。
・耐震等級には1~3の3ランクある
・耐震の計算方法は3種類ある
・計算の詳細さが上がるほど、同じ耐震等級でも実質の強度が上がる
上記を踏まえて今回は。ひのきパパが思う今家を建てるなら最低限確保した方が良い耐震性能をお話しします。
強ければ強いほどいいんだから、許容応力度計算で検討した耐震等級3でいいんじゃないの?
それはその通り!
できるなら、許容応力度計算で検討した耐震等級3が良いに決まっている。
けど、それを言っちゃぁ話が終わっちゃうので、最近の地震の事情や法令の変化を踏まえて説明するよ!
現在、家を建てるなら必要な住宅性能 ~耐震性 その2~
最近の地震事情 過去に例のない地震だった熊本地震
記憶も新しい2016年の熊本地震。
益城町において、過去に例のない地震が起きた。
何が起きたの?
震度7の地震があった2日後にまた震度7の地震が起きた。
震度7が短期間に同じ地域で2回起きた事例は過去になかった。
一回目の震度7でダメージを受けた構造が、2回目の震度7でさらなるダメージを受けた
2回も震度7!?
耐震等級2は『震度6強〜7程度の地震が起きても補修により引き続き居住できる』だから、1回目の地震のダメージは残るわけか。
そうだね。こういう地震があるとなると、建築基準法ギリギリというのは不安になるね。実際、今の建築基準法の耐震基準に変わった2000年以降の建物の大破・倒壊率は約6%。17棟に1棟の割合で大きな被害を受けている。これを低いとみるか高いとみるか個人の主観があるけど、私は決して低いと思わない。
実は益城町の地震は、もう一つの興味深い話がある。
耐震等級3の建物は許容応力度計算・品確法のどちらも倒壊無し、大きな損壊は無く、無被害も多かったそうなんだ。
すごいな耐震等級3!
ここで前回の構造別強度ランクをおさらいするね
YouTube 『「構造塾」木造住宅の耐震性能を本気で考える!』 から引用
益城町の事実から、品確法の耐震等級3以上であればひとまず安心ということがわかる。同時に、許容応力度計算の耐震等級2から3でも良いということでもある。
めんどくさいから許容応力度計算の耐震等級3でいいと思うけど
できるならそれに越したことは無いね。
積雪地なんかは屋根の上の雪の重さを足して計算しなきゃいけないから、許容応力度計算の耐震等級3は難しいケースがあるんだよね。あと都心の狭小地の3階建てとかも難しい。
だから、益城町の事実から許容応力度計算の耐震等級2から3、または品確法の耐震等級3が推奨ってことになる。
最近の法令の変化 その1 断熱性能が上がると耐震性能も上げる必要がある?
次は最近の法令の変化による影響を説明するね。
2022年10月から長期優良住宅の認定基準が改定になった。
具体的には必要となる断熱性能が従来の断熱等級4からZEHレベルに変更されるんだ。
それと耐震性がどう関係するの?
この改定の際に耐震性能の基準も厳しくなったんだけど、その理由が以下。
『近年、断熱材や省エネ設備の設置などにより木造建築物が重量化。社会資本整備審議会答申(R4.2)において、壁量計算等で構造安全性を確認している木造建築物の安全性確保のため、必要な壁量等の構造安全性の基準を整備することとされた』
要約すると、最近の住宅は断熱性能が上がって、断熱材や窓などが重くなったり、太陽光パネルが載るようになったから、その分を加味して、耐震性を厳しく評価しますよってこと。
断熱性能UP = 耐震性も上げなきゃならないってことか
具体的には、品確法で計算する際は、従来の基準の耐震等級2から、新基準では耐震等級3に変更になる。他に太陽光パネルを考慮して屋根の重量を重く考えたりする必要もある。
でも、許容応力度計算で計算している場合は、耐震等級2でも大丈夫だよ。
すごいな許容応力度計算!
ここで重要なのは、国が断熱性能を上げると、耐震性能も従来の基準のままではだめだと認めたことなんだ。
詳しくは後日、断熱性能の回で説明するけど、国は2025年までに住宅の断熱性能の最低基準を設定・義務化しようとしている。そして2030年までに断熱性能の最低基準を今のZEHレベルまで向上させようとしている。
2025年の基準(省エネ基準)と、2030年の基準(ZEH基準)の断熱性能の表は以下。
JFEロックファイバー(株)社のHPより引用
今、長期優良住宅の断熱性能の基準はZEHレベル。2030年に国が義務化しようとしているのもZEHレベル。
となれば当然、長期優良住宅と同じとまでとはいかないまでも、すべての住宅が守らなければいけない建築基準法の耐震基準の見直しはあると考えるべきだよね。
下手をすると、省エネ地域区分ごとに耐震基準に違いがでるなってことも考えられる。
家を建てた後に耐震基準の見直しがあるのか。
もし建てた家が見直された耐震基準以下だとどうなるの?
建物の建築後に法令が変わって、既存の建物が法令を守れていない場合、その建物は『既存不適格』という扱いになる。そのまま住む分には問題ないけど、もしその住宅を増改築、または大規模なリノベーションをする場合、新しい法令に適合するように是正する義務ができる。
それに加えて、既存不適格というレッテルを貼られてしまうことによって、もし家を売却するときに安くなりやすいし、買う方も住宅ローンに制限がかかるケースもある。家の資産価値が落ちてしまうことになるんだ。特に耐震は気にする人も多いから影響は大きい。
建築当初は合法だったはずの家が、法令の変化によって、レッテルを貼られるなんて、そんなのないよ!
法令変化の途上にある今だからこそ、家を建てるなら先を見越して建てる必要がある。それに建築基準法の耐震基準の元となった兵庫県南部沖地震よりも大きな被害の地震が複数記録されている昨今、やっぱり、許容応力度計算の耐震等級2から3、または品確法の耐震等級3を取得するべきだと思う。
さらに言うと、昨今の法令の変化はまだあって、できうるなら許容応力度計算をした方が良いのだけれど、それについては後日紹介します。
まとめ
<現在、家を建てるなら最低限必要な耐震性能>
許容応力度計算の耐震等級2、または品確法の耐震等級3
<ひのきパパおすすめの耐震性能>
許容応力度計算の耐震等級3